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震える山。2005年5月18日(水)

 「震える山」という本を読みました。著者は「クールー病」という狂牛病と同種の感染症の調査のためにゴロカで1年を過ごします。「クールー病」は発病すると、手足の自由がなくなりまともに立つこともできなくなります。感染するとウイルスが長い間潜伏するため何十年もたって発病する病気です。
 「クールー病」はPNGの特に高地で多く発見されました。理由は昔このあたりでは人肉を食べる儀式が行われていたからです。

大きめの本です。


帯をとったところ。

 文化とは何かを考えさせられる本でした。ある習慣が親から子へ、そしてそのまた子へ受け継がれ、その時代にあうように、またより良くするために研ぎ澄まされていったもの、それが文化か、と思います。つまり文化とは時代をまたいで多くの人の考え、涙、血や汗がしみこんだもの。それはモノかもしれない。目に見えない考えや想いなのかもしれない。
 PNGの文化とは。シンシンセピックの彫刻。それは文化か。多くのPNG人はそれらに格別な想い、こだわりを持っていないように感じます。お金がもらえればいつでもシンシンをやるし、セピックの彫刻は単なるみやげ物と化し今やなんの輝きもないと言います。新石器時代さながらの生活をしていた60年前、突然、鉄の鳥が飛んできて、鉄の箱が地上をかけめぐりました。それらの宝が手に入るなら自分たちの文化は捨てても良かったのかもしれません。
 文化がないということはその時代の頭脳だけしかつかえないということ。自分たちの過去の経験からより先進国の良いところのまねしかしないでしょう。著者は80年にゴロカで1年間過ごし「PNGの将来の発展を想うと心が痛んだ」といいます。95年に再訪し、80年よりさびれていた町を見てなんともいえない気持ちになったそうです。

----------本について---------------
「震える山 "クールー、食人、狂牛病"」
ロバート・クリッツマン 著
榎本 真理子 訳
法政大学出版局
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中には写真が結構たくさんあります。


こんな感じで。
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